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A mysterious story不思議なお話

32歳になったばかりの頃、わたしはある男性に恋をしていた。

当時独身のわたしは、ある日、その男性とやり取りをする中で強烈に恋に落ちたのだ。

恋に落ちたその穴は、深く暗い穴だった。

想像しうる最高の至福と天国を経験し、想像しうるすべての魑魅魍魎が地獄の釜の蓋をあけて現れた。

わたしの頭は、かつてないほどとてつもなくクリアーになり、綺麗なものも汚いものもすべて目にすることになり、また過去のすべての疑問をすべて理解した。

だが結局、わたしは神と契約をし、神はそれを叶え、わたしは彼に想いを伝えることも実る事もなかった。

失恋後わたしはゆっくりと過去の記憶を失っていった。

自分の名前も親の名前も顔も、初めて見る人に見えた。

簡単な挨拶の言葉も、頑張って思い出さなければ出てこない。

社会からとんでもなく疎外されたまま、社会生活を送ることになった。

一見普通な様子のわたしは、周りから奇妙に見えていたのだろう。

不審がるものや、わたしの奇妙な様子行動を嘲笑まがいに指摘して質問するもの、ただそっとして見守ってくれるもの、わたしを天使か天国の人のようだというもの。

これらの言葉が意味するのは、わたしの足がこの世についていなかったということだろう。

失恋直後に話を戻す。

わたしは一世一代の恋愛をやり遂げた事で、何日も何ヶ月も空っぽに脱力していた。

仕事を辞めて、毎日ウトウトし、夜も昼も熟睡することなく白昼夢を見ていた。眠りも目覚めも突然やってくる。

ある日自室のソファで白昼夢を見た。

わたしは地球を発ち宇宙へ向かっていた。

呼吸に変わる生命維持法が自分の内部から発動し、苦もなくまっすぐに宙に向かう。

わたしは彼と出会って始まった一連の変化(進化)について、ある大きくそしてシンプルな疑問を抱えていた。

自分では答えの出ないその答えを知るために、宇宙の大元・神の元を目指していた。

その質問は本当に根元となるシンプルなものだからこそ、わたしは難なく宇宙に飛び出すことができたのだ。

途中、グレイと呼ばれる種類の監視役の宇宙人二人がわたしに気づいて慌てて近づいてくる。

まだ生きている人間が単身宇宙に来ることは滅多になく、また普通はストッパーや規制がかかりそこまで来ることは出来ないはずだ、と彼らは思っている。

そして、わたしは単身宇宙に行けるほど悟ってはいないのに、彼との出会いがわたしを身軽にし(言い換えれば空っぽにし)、単純な愛だけをエネルギーにして宇宙へ来てしまった。

予定外の異常事態にグレイはわたしを怯えさせないように、でも立ち入りを阻止すべく緊張感をもってわたしのそばへ来る。

わたしは「質問があって、上の方の答えを得るために来た。どうかこのまま行かせて欲しい」と頼む。

わたしはグレイに囲まれてもまったく怖くないし、彼らが知的な存在だということはすぐにわかったので、わたしは懇願する。答え得られずして帰るつもりもなかった。

わたしと彼らとの意思交換は言葉によるものではなく、テレパシーと呼ばれる想念によるものだ。

わたしは彼らの困惑をはっきりと感知できるし、わたしのシンプルなエネルギーも、そしてその大きさも彼らに伝えることができた。

彼らグレイは困惑しつつも、わたしの単純な必死さに、手に負えなくて上の管理者と通信してわたしをどうするか指示を仰いでいた。

指示を得て、その指示にも困惑した様子の片方のグレイが、「いま質問の答えを与えることはできるが、そのことについての記憶を消さなければならない。つまりあなたは今答えを得ることができるが、すぐに記憶を消すことになるので地球に持ち帰ることはできないが、どうするか?」

わたしは記憶を消してもいいので質問の答えが欲しい、と答える。

彼らはわたしに答えを与えてくれた。

その瞬間、わたしは心から納得し、わたしの全身は理解と喜びに満ち溢れ、かつてないリラックスを経験した。

そしてその瞬間、わたしは白昼夢から目覚めた。

もらった答えは覚えていない、自分が抱えていた質問も覚えていない、だけどそれが起こったことは記憶消されないんだな、と思いながら、まだ残っている心と体のリラックスと安堵感の余韻でいつか地上で答えをまた見つけますように、と願った。

2011年の出来事。

2020年に記す。


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